美しい田園風景が広がる、岩手県北上市和賀町岩崎。2013年7月、岩崎商事の及川仁一代表は、コンビニエンスストアと産直施設が併設した店舗「ヤマザキショップ北上岩崎店」をオープンさせました。
オープンのきっかけとなったのは、地域住民の生活を支えていたミニスーパーの閉店により「普段の買い物が不便になった」という声が多く聞かれるようになったこと。そこで、地元の農産物を販売できる産直スペースと、日常的な買い物ができるコンビニを併設した店舗の開店に踏み切りました。
店舗面積の約3分の1を占める産直スペースには、野菜や果物、生花など、色とりどりの商品がずらりと並びます。
生産会員の多くは、家族で食べる分を家庭菜園で細々と作っていた地域住民。「しかし、自分の家庭で消費できる量は限度があります。これまでは近所の家庭に無償であげたり、せっかく手間をかけて育てながらも捨てたりしていました。それを商品として販売できるようになったことは、購入者にも喜んでもらえるし、うれしいことですよね」と及川さん。
生産者と消費者の距離が近いことも産直の魅力の一つ。
商品を並べている最中に「これいくら?」と価格交渉が始まることも。
家庭菜園を持つ家が多い地域ということもあり、当初、産直の利用者としてターゲットとしていたのは、店舗近くにある温泉やスキー場へ訪れる観光客。狙い通り観光客の利用がある一方で、「自分が作っていない農産物を買いたい」という地域住民からの声もあったといいます。店舗のオープンによって、このように地域住民や観光客の利用があり、ものとお金の新たな流れが生まれ始めました。
及川さんが意識しているのは「地域の中でお金が回ること」。及川さんの挑戦は、コンビニを併設することで地域住民の日常の買い物を支えると同時に、地域内における経済の活性化を目指したものでもあります。
さらに及川さんは「商品の売り買いだけでなく、生産者同士で農業に関する情報交換ができたり、観光客に地域の良さを知ってもらえたりする場としても役割を果たしたい」と希望を語ります。生産者・消費者の「つなぎ役」として、及川さんの地域の活性化に向けたチャレンジが、これからも続きます。
(2014年8月取材)
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