「タコは美しい」と語るイアン先生

寿司・刺身・タコ焼きと、食卓にあがる食材として身近なタコですが、その生態については未だ謎の部分が多いといいます。仙台にある東北大学で長年タコの研究をしているグレドル・イアン先生にお話しを伺いました。

「タコはそもそも貝類の仲間で、アンモナイトやオウムガイのように大昔は殻を持っていました。しかし進化の過程で退化し、今の殻のない状態になったんですよ。それから、タコは美食家として知られていて、大好物はカニ。その他エビやアワビ、ホタテなどの貝類も好んで食べます」とのこと。

食事の際は、貝やカニの殻に小さな穴を空け毒を流し込み、麻痺したところを口の中にある“歯舌”と呼ばれるおろし金のような器官で細かくしてから飲み込みます。

「タコの脳は食道を取り囲むようにドーナツ状になっているから、餌を細かくして食道を通過させないと、頭が痛くなるのかもね(笑)」とイアン先生。

またタコは非常に繊細で、汚れた海ではすぐに病気になってしまいます。「タコが捕れるところは水がきれいなんですよ」。

 

タコの子育て

タコの寿命は短く、マダコは1年、ミズダコは3年程度しか生きられず、その短い寿命の中で成長・繁殖を終わらせなければなりません。産卵の時期になると岩穴の天井などに卵を産み付け、ミズダコの場合一度に約9万個もの卵を産卵します。新鮮な水が届くように海水を吹き付けたり、カビやごみが付かないように腕で卵の表面を撫でて掃除したり…。孵化までの約1ヵ月、お母さんタコは餌も食べずひたすら子どもたちのために尽くします。しかしそれだけ大切に育てられても、孵化した後に食べられたり病気になったりして、無事に成長できるのは1%にも満たないとか。

 

タコの賢さから脳の研究も進められている

タコの脳は大きく賢いことでも知られていて、物の形や人の顔まで認識できるのだとか。

「それぞれ個性があって、水槽を覗くと頭を出して挨拶してくれるタコから、おびえてじっとしたまま動かないタコもいますよ。それから、こちらが怖がって近づくとタコが強気になって墨を吐くこともあるんです」。

そんな中イギリスではタコの賢さから、タコをクジラなどのように哺乳類として扱おうという動きも出ているそう。それほどまでに知性の高さが認められているようです。

 

世界に誇れる志津川のタコ

食べておいしいだけでなく、生態についても多くの魅力を秘めたタコは、今後も新しい発見がまだまだありそうです。「宮城はタコがたくさんいるから研究に適しているんだ」とイアン先生。世界に誇れる志津川のタコを、これからも漁師さんに捕り続けてもらいたいと、当プロジェクトは考えます。

 

≪4.タコが食卓に届くまで 6.オクトパス君≫