住民目線の支援で住民に身近な「相談窓口」に
<やまもと復興応援センター>

団体と助成の概要

 

 宮城県亘理郡山元町で仮設住宅に住む人々の生活再建支援を目的とし、2011年10月に発足した、やまもと復興応援センター。同センターは、率先して被災者支援を行ってきた地元の社会福祉協議会と、震災発生直後から炊き出しや災害ボランティアセンターの運営など、山元町で一貫した支援を行ってきた国際協力NGOのADRA Japanなどによる連携組織です。

 地域住民とのパイプを持つ社会福祉協議会を、ADRA Japanが国内外の災害現場で培った支援ノウハウでサポートする恊働関係を構築。山元町内にある8団地に分けられた約1030戸の仮設住宅において、応援センターでは孤独死防止と住民ニーズの把握のために戸別訪問を行うほか、集会所の利用管理と支援団体との調整・連絡を行っています。

 

仮設住宅への支援の調整役

 山元町では、仮設住宅でイベントや炊き出しの支援活動を行うにあたり、応援センターに事前の団体登録や仮設住宅全戸への案内チラシのポスティング、活動報告書の提出をお願いしています。センター発足以前は、イベントなどの支援が集中する地区、まったく無い地区と仮設住宅の間でばらつきがありました。また、区長的役割を担う仮設住宅の連絡員には各方面から電話が殺到し、一被災者である連絡員も疲弊していました。そこで、応援センターでは支援団体に登録制をお願いし、情報を一元管理できるようにしたところ、団体への情報提供がしやすくなったうえ、住民全員にイベントを告知できるようになり、支援の偏りも減らすことができました。

センター主催のイベントも開催

 ADRA Japan所属で支援団体の調整を行う副センター長の渡辺日出夫さんは「支援団体からは、手続きが面倒だという意見もあるが、住民目線で考えると必要なこと」と言います。現在では、ほぼ毎週、各集会所でさまざまなイベントが開かれるようになりました。

 事前に仮設住宅へ足を運ぶことができない団体のポスティング業務を住民に委託することで、引きこもり防止や住民同士の交流につながるという波及効果も生まれています。「住民から募集した登録ボランティアに順番でお願いしている。80歳近いおじいさんボランティアは、ポスティングしていると知り合いから『何しているの』と声をかけられるので、自分で『ボランティア』という腕章を作ったそうだ。仕事は多くないが、やりがいを感じてもらっているようで嬉しい」(渡辺副センター長)。

 また、イベントの実施報告書で、スリッパなどの集会所備品の不足が指摘されれば、センターはすぐに町役場へ報告。集会所の改善が図られています。

 被災地では、震災発生から時間が経つにつれて、多くの団体が支援から撤退し、イベント開催数も減少しています。応援センターでは、平日閉めていた集会所を解放して住民主体で集まれる機会を提供するとともに、将来的に、これまで山元町に来てくれた登録団体に呼びかけて、支援を依頼しようと考えています。「イベントを楽しみにしている住民もたくさんいるし、イベントしに来てくれる団体も住民と再会できたら嬉しいよね」(渡辺副センター長)。住民のためにも、支援が減る時期にこそ積極的な「攻めの調整」を行えるよう、行政を含む協力団体と継続的な支援体制を整えています。

 

生活支援相談員への研修も実施

生活支援相談員とセンタースタッフ

 応援センターの主たる事業となる仮設住宅の戸別訪問は11年6月に始まり、 11年12月からは社会福祉協議会から派遣された生活支援相談員13人が、住民の生活スタイルに合わせて戸別に訪問しています。相談員は、住民の心身の変化を見守るほかに、住民の支援ニーズを集約し、行政や支援団体につなぐ役割を担います。

 センターでは、戸別訪問先で相談を受けた際、すぐに病院などの専門機関や心理士の専門家を紹介できるよう、過去の相談事例集や地域情報をまとめた情報ファイルを作成。気分が晴れない、といった原因を特定できない相談にも対応できるよう、さまざまな相談窓口パンフレットをファイルに用意し、相談員に携帯させています。

 同時にADRA Japanでは、「実践的な支援手法をもっと知りたい」という災害救援活動の経験がない相談員の声を受けて、 新潟中越地震で仮設住宅支援にあたった経験者を講師に招き、聞き取りのコツなど具体的な手法を学べる研修を開きました。仕組みの構築と人材の育成で、双方向から応援センターの組織基盤強化を支援しています。

 

住民の相談窓口のような存在へ

渡辺副センター長

 渡辺副センター長が目指すのは、「『応援センターの相談員に言えば、何とかなる』ような、住民にとって気軽に相談できる総合窓口」。
仮設住宅の設備問題から健康相談まで何でも受け止めるご用聞きとなるべく、住民との信頼関係作りに励んでいます。効率的な被災者支援を行う山元町の中心拠点となることを目指して、今日も生活支援相談員が顔なじみになった住民と会うために仮設住宅へ向かいます。