震災前より魅力ある商店街・地域づくりを
<南町柏崎青年会>

団体と助成の概要

 

 2011年12月24日。宮城県気仙沼市に51もの店舗が入居する被災地最大規模の仮設商店街「気仙沼復興商店街・南町紫市場」がオープンしました。ふかひれ寿司で有名なあさひ鮨など飲食店を筆頭に、鮮魚や精肉、青果店があれば、理髪店や学習塾までありとあらゆる商店が軒を連ねています。商店街の再開を通じて、人が集まる活気あるふるさとを取り戻そう、と地元青年会のメンバーたちが仮設商店街の設立支援に手を挙げてから約半年。ようやく、スタートラインに立つことができました。

 

住人の流失を食い止めたい

 約140の店舗があった気仙沼市南町商店街は、魚市場や市役所、銀行などの近くに立地していたことから、古くから気仙沼市の繁華街としてにぎわっていました。しかし震災によって、ほとんどの店舗が被災。住民の多くが商店街近くの高台にある神社で避難生活を送るなかで、家や店舗を失い、街を離れる人が後を絶ちませんでした。

 商店街のあった旧市街地には、約120人が参加する南町柏崎青年会が代々存在し、地域のお祭りや奉仕作業を行っていました。震災後には、物資の調達分配や炊き出しなどの避難所運営をしていました。人の流出に危機感を覚えた青年会では、青空市場を開催。その後、継続して商売できる場所の確保を目指して、中小企業基盤整備機構の仮設店舗支援事業に応募しました。また同時に、入居する店舗との連絡会議や商店街の運営を行うために、NPO法人「気仙沼復興商店街」を立ち上げました。柏崎南町青年会会長の坂本正人さんをはじめとし、青年会メンバーもNPOの活動を兼務しています。

 

地元客だけでなく県外からのボランティアも

南町紫市場オープン日の様子

 復興商店街の周辺には、被災住居の修理を行うために2階部分に住む人のほか、市役所近くに住む被害を免れた住民、気仙沼小学校などの仮設住宅に入居する住民などが生活しています。しかし、近場で買い物できる場所は少なく、復興商店街のオープンを心待ちにする声は各方面から聞こえていました。

 そんな期待に応えた復興商店街にはオープン以来、「ほぼ、当初の見込みどおり」(坂本会長)の来客があり、にぎわいを見せています。地元客が来ている証拠として、青果店や婦人服店、魚屋向けの刃物店が繁盛していると言いますが、坂本会長はそれ以上に、県外からボランティアや復興ツアーのお客さんが多いという印象を抱いています。「いろんな所から来てくれるのは嬉しい。だけど、震災から時間が経つにつれて、人の流れがどう変わるのか分からない」(坂本会長)と不安を隠せません。

 

震災前より活気のある商店街づくりを

 一般的に商店街は全国各地で様々な成功・失敗例が存在します。気仙沼復興商店街では元の商店街の復旧・復元ではなく、震災前よりも活気のある商店街作りを目指しています。また、運営側では、当面2〜3年間は入居店舗に仮設店舗の運営で資金を作ってもらい、本店舗の再建に役立ててほしいと考えています。ですが、そもそも地域に活気がなければ、店舗の再建はもとより町の復興は難しくなるという懸念がありました。

青年会イベント部の会議

 そこで南町柏崎青年会は、気仙沼復興商店街のサポーターとして、復興商店街内での定期的なイベントの開催や、固定客の確保にポイントカードの導入を支援し、継続して住民が地元の商店街に足を向けられるような仕掛けを作っています。青年会では若手メンバーでイベント部を結成。オープニング時には、地元高校生のダンスパフォーマンスやご当地アイドル「SCKガールズ」のライブ、バンド演奏などさまざまなイベントを誘致することができました。チラシや新聞広告を使っての広報業務も、イベント部が手がけます。

 また、気仙沼市は子ども太鼓や演劇活動が盛んでしたが、練習場の多くが被災し、子どもたちが気軽に集まることができない状態にありました。復興商店街に隣接する子ども広場「cadocco」では、子どもダンスや演劇の練習に使えるよう開放しており、商店街ではそれらの発表会を兼ねたイベントを継続して開催する見込みです。

 12年2月には、復興商店街の全店舗で使うことができるポイントカードを導入。同じころ、バレンタインデーに合わせて試験的にバルチケットを発売しました。クーポンについては、利用者から使い方が難しいという声が寄せられました。坂本会長は、今後の制度設計に活かしていきたいと考えています。

 

市外からの顧客を引き込む仕組みづくり

青年会坂本会長

 実際に復興商店街を運営していく中で坂本会長は、地元顧客の確保と平行して、市外からの顧客を継続して呼び込む必要があると考えます。復興商店街を紹介するパンフレットなどを作成し、市内の宿泊施設や観光協会に設置してもらうほか、東京・銀座にある気仙沼市のアンテナショップやこれまで支援に来てもらった各団体へ送付したいと言います。坂本会長は「市外から来るお客さんの多い状態がいつまで続くかは分からないが、我々も頑張って気仙沼復興商店街をアピールしていく」と宣言します。

 地元に対しては、遠隔地にある仮設住宅と復興商店街をつなぐバスの運行を検討する一方で、青年会としては今後も地域のお祭りを運営していくつもりです。

 復興商店街に入居する店舗の中には、店舗と家屋を両方失い、遠くの仮設住宅から店舗に通っている商店主もいます。そんな人々が、元いた場所により近くで生活できるよう、青年会では復興住宅の建設についても議論を重ねています。人を呼び戻して活気あるふるさとを取り戻すには、たくさんの課題がありますが、青年会では仲間たちとともに前を向いて、一歩ずつ進む姿勢です。