地域の若者が復興にたちあがる
<宮古災害復興支援チームM.A.D>

団体と助成の概要

 

 岩手県宮古市で活動する宮古災害復興支援活動チームM.A.Dは、地元出身の若者が中心となって立ち上げた市民団体。行政や社会福祉協議会による支援が行き届かない地域を対象に、戸別訪問してニーズ調査を行うほか、コミュニティの活性化につながるイベントの企画運営を行っています。

 一方で、事業計画の策定や会計業務などの組織運営全般については、社会福祉協議会による支援を受けています。相互で足りないところを補うことで、地域的にも内容的にも、広範囲にわたった被災者支援を実現しています。

 

地元出身の若者たちが復興にむけ組織

宮古市生活復興支援センターでの活動風景

 M.A.D代表の千葉智広さんは、宮古市内でパンクショップを経営するミュージシャン。震災直後から泥出しやガレキ撤去の現場で汗を流し、県外から来る多くのボランティアを束ねていました。社会福祉協議会と良好な関係を構築し、2011年7月、千葉さんなど個人ボランティアとして活動してきた7人が「宮古市の復興をリードする」と宣言し、M.A.Dを組織。社会福祉協議会の中に机を借りて活動しています。

 組織運営にまったく疎かったメンバーも、社会福祉協議会からボランティアセンターの運営を任されることで経験を積み、イベントの企画や運営ができるようになりました。その後も、社会福祉協議会からの助言をもとに、M.A.Dメンバーはまちづくりコーディネーター養成講座などの勉強会へ積極的に出席。支援団体との交流会に参加するなどで、市内外の支援活動の実態を学び、参考になるポイントは自分たちの活動に取り入れています。

 

支援が届きにくい在宅避難

在宅避難者のニーズを調査

 M.A.Dは、社会福祉協議会ではカバーできない地域を意識して活動しています。宮古市の鍬ヶ崎地区と金浜地区では、津波で家屋が半壊するなど被害を受けながらも、仮設住宅には入らず、自宅で生活している住民が多数存在します。そのような、いわゆる「在宅避難」を続ける方々のもとには、支援物資の供給をはじめとする支援の手が十分には行き届いていませんでした。

 そこでM.A.Dでは、専任スタッフ3人と、社会福祉協議会のボランティアセンター担当6人の9人チームで、2地区の約300世帯を訪問し、生活実態やニーズを調査してきました。

 いざ在宅避難者を訪問し、困っていることなどないかと聞いてみると「私たちは被災していないから」と謙遜されるケースがよくありました。それらに対して千葉さんは「在宅避難者のご近所には家屋が全壊して地元に住み続けることができない方がいる。その人たちと比べれば、確かに被害は少ないかもしれないが、津波被害を受けているのだから、不便があれば支援は必要」と訴えます。ニーズを引き出すためにも継続した訪問が必要だと説きます。

 M.A.Dではこれまでに、買い物に苦労しているという在宅避難者の意見を生協につなげて、無料送迎バスのルートを作ったほか、雑草や笹で荒れていた避難路をボランティアに整備してもらうなど、社会福祉協議会と一緒に問題解決を図ってきました。

 同様に、宮古市は年に2、3回は大雪になると知っている地元出身者として、スコップなどの除雪用具を購入し、雪かきができる体制を事前に備えました。今後、継続して戸別訪問することで、住民との関係を構築し、支援ニーズを引き出していく方針です。

 

社会福祉協議会が組織づくりをサポート

他団体と連携し様々な試みを実施

 発足して間もないM.A.Dに、組織運営アドバイスを行う社会福祉協議会スタッフの有原さんは「M.A.Dメンバーは人とつながる力がすごい。いろんな人を巻き込む力がある。おもしろい企画ができるのはM.A.Dだからこそ」と評価します。決してメンバーの数が多くないM.A.Dは、市内で活動している他団体と連携することで、年末年始カウントダウンの大規模イベントや各仮設住宅で餅つきなどの小規模イベントを実施することができました。

 新たな試みとして「電気の届いていない被災地区に明かりと笑顔を灯そう」と、光のアート作品を手がけるユニットTOCHCAを招き、作品作りのワークショップを開催しています。M.A.Dメンバーの金野侑さんは「イベント開催も大事なことだけど、何のためにやっているのかが大切。地元発の団体だからこそ、期待されていることはある」とその責務を感じています。

 震災復興支援をリードし、従来の障害者・高齢者福祉まで幅広く事業を展開している社会福祉協議会としても、復興に関わる市民活動の機能をM.A.Dに頼ることができるよう、M.A.Dの組織強化に積極的です。M.A.Dと社会福祉協議会が築く良好な協働関係について、有原さんは「社会福祉協議会と市民団体が一緒に活動してうまく行ったケースは少ない。だけど、震災からの復興を目指す点で出発もゴールも同じなのだから、一緒にやれば良いと思う」とし、今後の展開に期待を寄せています。