廃棄に待った! 価値ある食品を必要な家庭へ
<特定非営利活動法人 ふうどばんく東北AGAIN>

団体と助成の概要

 

 日本では多くの食品が、まだ十分に食べられる状態のまま廃棄されています。その量は年間約2000万トン。その一方で経済的に困窮し食料を必要としている人たちも多く存在します。

 これらの問題を改善しようと、廃棄処分になってしまう食品の提供を受け、必要としている人に届ける活動が広がっています。“フードバンク”と呼ばれ、全国に約40ある団体が取り組んでいます。宮城県仙台市にある「ふうどばんく東北AGAIN(あがいん)」もその一つ。多くのフードバンクが“もったいない”の観点から活動を行う中、生活困窮者支援に焦点を絞った活動を続ける特徴的な団体です。東日本大震災の発災により、仕事を失った人や働き手がいなくなった家庭もあり、被災地の困窮の度合いはより深刻さを増しています。

 

潜在するニーズの表面化

 

倉庫には所狭しと食料が並びます

 広い倉庫には、パスタやお茶、米、レトルト食品などがズラリ。これらは大手食品メーカーでパッケージの外箱が破損して規格外になったものや、商品として販売できる期間の終了が近いという理由で廃棄処分になる予定だったもの。食品としての価値はまだ十分にありおいしく食べられる状態です。ふうどばんく東北AGAINでは、大手食品メーカーや生活協同組合などから食品の提供を受け点検・整理をした上で、必要な家庭や福祉施設などに無償で届けています。2011年4月1日~2012年3月31日には年間約30万トンの食品を仲介しました(震災後の緊急支援期の実績を除く)。

 これらの食品が届けられる先は、ホームレスや被災者の支援を行うNPO、福祉施設など。ふうどばんく東北AGAINが連携している被災者支援NPOは現在40団体ほどあり、その団体を通して約100世帯の家庭が月1回定期的に食料を受け取っています。「被災した方の中には震災により引っ越しを余儀なくされ、仕事もなくなり収入がない。しかも障がいのある子どもがいるという家庭も。ギリギリの生活でなんとかがんばっている方たちがたくさんいます」とは、ふうどばんく東北AGAINの高橋事務局長。

 発災から1年半以上が経ち、直後に比べ生活環境が改善され落ち着いているように見える現在。しかし失業給付切れや雇止めなどの理由で潜在的な生活困窮者は膨れ上がっていて、2012年末あたりから表面に出てくると高橋事務局長は予想します。「これまで義援金や医療費の無料化措置でなんとか生活できてきた方も、それらが切れた後に生活のめどが立たなくなるケースも多く出てくるでしょう」。事務局では緊急を要する支援の要請に応えられるよう、常に約100世帯分の食料を備えています。

 

社会へ地域の課題を訴える

 

高橋事務局長

 「誰にとっても身近な“食”を切り口に、社会や企業へ生活困窮者の現状を伝えたい」と高橋事務局長。福祉施設や生活困窮家庭に届ける食料を、一般家庭から持ち寄ってもらう“フードドライブ”活動を各地で行い、家庭で食や食料廃棄について考えるきっかけを提供しています。回を追うごとに活動への賛同者も増え、新たに企業や農家からの食品の提供を受けたりボランティアとして関わる人が増えたりと、多様なつながりと広がりを生みだすことに成功しています。

 また、フードバンク活動を行う団体で唯一被災したふうどばんく東北AGAINの経験は、今後起こりうる災害時の教訓として注目されています。被災直後から避難所生活の時期には炊き出しや避難所への食料配布、その後仮設住宅に移ってからは生活に困窮する被災者の支援を続けていることから、こうした経験を整理し発信することも重要な役割の一つとなっています。

 

より細かでスピーディーな支援を

 

各家庭に届けられる食品

 高橋事務局長は、定期的な食料の提供は、被災者と定期的かつ継続的にコミュニケーションをとるためにとても有効だと言います。「食品の提供時には必ず顔を合わせなければいけないですからね。その時に、食べ物以外の生活の困りごとも聞いています」。こうしたやり取りの中から支援ニーズを拾い上げ、専門的な機関に繋ぐことも重要な役割といえます。生活環境の改善だけでなく、コミュニティの問題や雇用、医療の問題などを拾い上げ、様々な角度から支援を行っています。

これらの活動を可能にするのは様々な団体とのネットワーク。仮設住宅団地での見守り活動をする支援団体や被災者の就労支援を行う団体などと連携して支援要請に応えています。「今後は、行政や社会福祉協議会との連携がより一層重要になるでしょう」と高橋事務局長。支援が必要な家庭のセーフティーネットとなり、孤立や孤独死を防ぐために、垣根を越えた連携が不可欠です。さらに、より広範囲な地域に支援を届けられるよう配送拠点を増やすことや、支援が必要な家庭の情報共有の仕組みづくりも進めています。高橋事務局長は「より細かでスピーディーな支援を行いたい」と決意を語りました。

(2012年10月 インタビュー実施)