地域住民による長期的な傾聴活動を続けるために
<特定非営利活動法人 亘理いちごっこ>

団体と助成の概要

 

 宮城県の南部に位置する亘理町で、震災による不安や孤独を軽減させようと、仮設住宅やみなし仮設住宅(※)を訪問し話しを聴く取り組みが行われています。この「いちごっこお話聞き隊」活動の中心となっているメンバーは震災で被災した地元の女性たち。苦しみ、悩みを分かち合える立場として、同じ目線に立った傾聴活動を続けています。

 

届きづらい声に耳を傾ける

 

様々な人が集まる「亘理いちごっこ」

 太平洋に面し平野が広がる宮城県亘理町は、東北にありながら温暖な気候を特徴とし、いちごなどの農業や水産業が盛んな町。しかし東日本大震災による津波の影響で町の半分にあたる約35平方キロメートルが浸水。多くの町民が住まいを失い、2012年12月末日現在も3,622人が仮設やみなし仮設での生活を与儀なくされています。

 亘理いちごっこ代表の馬場照子さんは、震災直後から避難所へ炊き出しなどの支援を続ける中、被災者やボランティアへ温かく栄養のある食事を提供するためカフェレストランを始めました。被害の少なかった町の施設からスタートし、2011年7月には亘理小学校の近接へ、さらに2012年6月からは現在のプレハブ店舗へ移転。近隣の仮設住宅の住民や県外からのボランティアなど様々な人が利用しています。

 カフェレストランに食事にくる地元住民と接する中、馬場代表は被災者たちが様々な不安を抱えている現状を目の当たりにしたと言います。震災体験が頭から離れない、仕事がない、慣れない仮設住宅での生活……。そこでカフェの利用者だけでなく、外に出るきっかけがなく悩みを抱え込んでしまいがちな人の声も聴く必要があると考え、仮設やみなし仮設を訪問し傾聴活動を行う“お話聞き隊”を開始。2012年11月現在15人のスタッフが活動に参加しています。訪問先で聴いた話の記録を作成し、必要な場合には訪問頻度を高くする、あるいは町役場や社会福祉協議会へつなぐこととしています。

 

専門性を高めるため専門団体と協働

 

 お話聞き隊の活動を始めるにあたり、スタッフの傾聴スキルを高める必要がありました。さらに話を聴くスタッフの中には被災した経験もあることから“相手だけでなく自分も守る傾聴”を身につけることも課題。そこで「ファミリーカウンセリングサービス池袋オフィス」と協働し、専門のカウンセラーによる傾聴のトレーニングが始まりました。

傾聴活動での不安を講師に打ち明ける場面も

 2012年11月、宮城県亘理町で“お話聞き隊”スタッフ11人が集まり講習会が行われました。講師はファミリーカウンセリングサービス池袋オフィスの和田由里子さん。心理カウンセラーとしての長年の経験を生かし、傾聴のトレーニングを行います。

 この日の講習会では傾聴活動における注意点や話しを聞き出すポイントを学んだ後、二人一組になりロールプレーイングを実施。参加者の一人は「どうしても自分の考えを当てはめようとしてしまう。急がずに、相手の気持ちに寄り添って話しを聞くことを心掛けたい」と傾聴の難しさを口にしました。また講習会が実施される日には講師も傾聴活動に同行。現場での具体的なアドバイスがスタッフのスキルアップの手助けになっています。こうしたトレーニングを通して経験と専門的知識が蓄積され、地元住民による継続的な見守りを可能にすることが狙いです。

 また講習会は傾聴のスキルアップだけでなく、活動の意義付けも目的の一つ。「スタッフの方たちからは“本当に役に立てているんだろうか”との不安もよく挙がります」と和田さん。話を聴くスタッフにとって“自分の活動に意味がある”と改めて再確認でき、元気づけられる機会となっています。

 

「気にかけてくれる人がいる」という安心感

 

馬場代表(左)と乳井事務局長(右)

 傾聴活動を続ける中、新たな課題も生まれています。「話しを聞きます」と訪ねて行くと身構えてしまい、スムーズに話を聴くことができない場合もあるといいます。協働している和田さんからは、訪問する形の傾聴活動だけでなく違う角度からアプローチしてはどうかという提案もあります。カフェでのイベントの中で話を聴くなど、気軽に悩みを打ち明けられる機会を検討しています。

 また、亘理町から仙台市や名取市など他地域のみなし仮設へ移住している人たちから「亘理の人たちと話したい」という声が多くあると言います。そこで、他地域での集まる機会を設けたり、遠くからの送迎はできないかと模索しています。

 馬場代表は「いつでも相談できる相手がいる、気にかけてくれる人がいる、という安心感を届けたい。『もういらない』と言われるまでずっと続けたい」と語り、長期的に見守り寄り添い続ける意思を語りました。

 

 ※民間の賃貸住宅を、地方自治体が提供する「応急仮設住宅」に準ずるものとみなし、被災者が入居する住宅のこと。

 (2012年11月インタビュー実施)